【能登SDGsフィールドレポート第13号】SDGsが紡ぐ物語

金沢大学「能登里山里海SDGsマイスタープログラム」と能登SDGsラボは、2018年度から「マイスターSDGs奨励賞」を共同で実施している。

これは、本科コース受講生の卒業研究のなかで、持続可能な開発目標(SDGs)の視点で特に優れたもの、あるいは今後の発展が期待できるものを選考する表彰制度である。

 

3年目となる2020年度は、2月27日の成果報告会において全9件を対象に選考がおこなわれ、以下の2件が受賞した。

 

「能登ジン開発への取組」(松田行正さん)

能登の里山里海から採れる資源を用いた蒸留酒製造の事業化に向けた検討。プログラムを通じて得た知見や人脈を非常に有効に活用していることも含め、環境、社会、経済の相乗効果発揮をする研究であることが高く評価された。

 

「高校生と大人が交わる『まちの学び舎』の提案と実践」(木津歩さん)

地域に根差した将来世代育成の意義と、多様な主体との連携など展開への期待により受賞した。

 

選考委員は金沢大学および能登SDGsラボ運営委員会から計4名が務めた。

評価結果を取りまとめて受けた印象として、選考が非常に難しかったことをまず強調したい。

これはひとえに9件の卒業研究すべてが力作だったためである。

「全員が奨励賞でよいのではないか」

という言葉をある教員から聞いたが、そのとおり優劣付けがたい研究が揃っていた。

 

選考委員によって評価が分かれることも印象的だった。

SDGsが広範な課題を扱うので、どの視点を重視するかによって判断が変わるのは必然である。

それは決して悪いことではない。

多様な価値観を包み込むのがSDGsであるならば、評価のしかたも多様であってしかるべきである。

それを示す形となった。

 

受賞した2名は、3月20日のプログラム修了式の会場で賞状と副賞を受け取った。今回の副賞は以下のとおりである。

 

・アテの木の額縁(辻口洋史)

・柞の炭(大野製炭工場)

・バウムチップス(メルヘン日進堂)

・奥能登粟津のお米(粟津村おこし推進協議会)

・SDGs加賀ゆびぬきタックピン(itohana)

 

いずれもマイスターの取り組みから生まれた商品であり、それぞれに物語がある。

このうちお米とゆびぬきは、2年前に本賞を受賞したマイスターの活動の成果品である。

マイスターSDGs奨励賞は、2018年度当時、マイスタープログラムの陣頭指揮を執っていた伊藤浩二さん(現、岐阜大学)が提案した制度である。

マイスタープログラムにSDGsの視点をどう組み込むかが当時の検討課題であり、一つの手段として本賞が導入されることとなった。

2019年度からはプログラム名にSDGsが含まれ、講義や実習にもSDGsが組み込まれるようになっている。

 

SDGsを通じて自身の取り組みを意義づけできれば、そこから新たな可能性が広がっていく。

奨励賞の歴代受賞者を含むマイスターたちの活躍が、その実例を示してくれている。

 

北村健二(コーディネーター)

 

本号は、『広報すず』2021年6月号「金沢大学能登学舎の窓から」コーナーの内容を、一部編集して掲載したものです。

能登SDGsフィールドレポート:日々の活動のなかで北村個人が感じることを共有するための媒体で、組織の立場や見解を示すものではありません。