【能登SDGsフィールドレポート第12号】知識・技術・思いを集めた地域づくり

石川県珠洲市で2007年から続く金沢大学の社会人向け人材育成講座。

現在は「能登里山里海SDGsマイスタープログラム」の名で実施されている。

2019年度までに延べ196名の修了者(マイスター)を輩出した。

各自の知識・技術・思いを駆使して地域に貢献する貴重な人材集団だ。

 

例えば、整体院を営む傍ら地元集落の活性化に尽力する小家伸吾さん。

ホタル観賞会で来場者の似顔絵を描き、受け取った代金を地域活動資金の一部に充てている。

筆者の似顔絵も彼の作品の一つだ。

特技を生かした地域貢献といえる。

 

もう一人の例は舟場千草さん。

古民家が好きで、建築や不動産業の専門知識を持つ。

空き家の増加とそれに伴う諸問題は全国共通で、過疎高齢化の進む奥能登地域も例外でない。

一方、都会から地方への移住を希望する人たちにとって、魅力的な空き家が見つかることでその地で暮らすことが決まる場合もある。

 

すなわち、空き家はプラスの地域資源にも、マイナスの不良資産にもなりうるのである。

その分かれ目は、所有者がいかに早い段階で対策を打てるかどうか次第だ、というのが舟場さんのプロジェクト研究の結論である。

 

売買や賃貸の希望を受けてからの支援には限界がある。

いずれ空き家となる宿命の「予備軍」の所有者に対していかに働きかけるか。

既存の枠組みを超えた仕組み作りのため、行政や他の主体と連携しながら、舟場さんは自身の専門性を活かそうと考えている。

 

個別の知識・技術・思いをいかに結集させるか。

国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の下、地域の環境・社会・経済を持続可能なものにしていくために必要な視点であろう。

 

北村健二(コーディネーター)

 

本号は、時事通信社『厚生福祉』2021年4月13日号への寄稿を、許可を得て転載しています。

 

能登SDGsフィールドレポート:日々の活動のなかで北村個人が感じることを共有するための媒体で、組織の立場や見解を示すものではありません。