能登SDGsラボ(以下、「ラボ」)が金沢大学能登学舎の中に開設されてから、2019年10月をもってちょうど1年が経過した。金沢大学の能登里山里海研究部門で研究に従事する僕は、社会分野コーディネーターとしてラボの仕事も兼任することとなった。
ラボの仕事をするようになって、接する人たちの多様性が増している。下は中学生から上は公民館長さん世代まで年代も幅広い。勉強会などに招いていただき、持続可能な開発目標(SDGs)と自分たち自身の関係について考える。そんな場をつくるのも仕事のひとつだ。
写真:珠洲市内公民館の館長・主事および教育委員会事務局と開催した第9回能登SDGs座談会(2019年6月5日)
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一方で、違和感を覚えることもある。それは、ただ漠然と「SDGs について教えてほしい」というような声を聞くときである。
情報は世の中にあふれている。知りたいという意欲があれば、大抵のことは自分で調べられる。「教えてほしい」という言葉の裏には、「きっと『答え』がどこかにあって、それを誰かが与えてくれたらよいのだけど」という心理があるような気がしてしまうときがあるのだ。
実際、欲しい答えを与えてくれる人は世の中にいるだろう。でも、自ら考えようとする前に、「あなたの活動はSDGs の○番目の目標に貢献します」などと他の人から手軽に言ってもらったとして、そこにどれほどの学びがあるというのだろうか。
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あなたの答えを僕は持っていない。あなたの答えを探すのはあなた自身。ただ、目的と意欲をもって集まる「わたしたち」が語り合って共に答えを探そうというのなら、喜んでご一緒させていただきたい。
自分が何をしたいのか。そして、何をできるのか。みんなで考えるための手引きのひとつがSDGs。そこから学び合いがはじまる。
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そのような学び合いから元気をもらうことがある。例えば、SDGs 講演会や海岸清掃でご一緒した大谷小中学校。7 年生が持続可能な海について課題研究で取り組んでいる。教員は寄り添うだけ。基本的にすべて自分たちで調べて考える。その成果を12 月に地域の人たちに発表するそうだ。もうひとがんばり!
写真:大谷小中学校7・8年生とゲームも活用してSDGsを考えた講演会(2019年7月9日)
大人も負けていない。珠洲の青年リーダー100人会議が11月16日に主催する「珠洲SDGsステーション」という行事にも注目したい。自分たちで企画提案して実施する意欲。まさに学び合いを生む精神である。
写真:青年リーダー100人会議と開催した第7回能登SDGs座談会(2019年4月12日)
そして『広報すず』のSDGs 特集(2019年7 月号)。市の広報担当者が、SDGs を「自分ごと」にすることで生まれた成果の最高の例であり、この担当者さんとの対話から僕も多くを学ぶことができた。
SDGs は遠い対岸にあるのではない。
北村健二(社会分野コーディネーター)
参考情報:
・本稿は、『広報すず』2019年11月号「金沢大学能登学舎の窓から」に掲載された記事を一部改変したものです。
・広報すず https://www.city.suzu.lg.jp/soumu/kouhou_suzu_PDF_koukai.html
能登SDGsフィールドレポート:日々の活動のなかで北村個人が感じることを共有するための媒体です(組織の立場や見解を示すものではありません)。