【能登SDGsフィールドレポート 第1号】動と静のあいだ

能登SDGsラボが情報を発信するための媒体にはいくつかある。地元珠洲市にある株式会社エスプリさんの力を借りて段階的に各種媒体を整備している。

 

1つめの媒体はリーフレット。ラボ開設時に作成することとなった。「手に取りやすいサイズで、本のしおりがわりに挟んだり、家に持ち帰って冷蔵庫の扉に磁石で貼り付けてもらえるようなもの」という提案をしたのは北澤晋太郎さん(エスプリの代表取締役)。専門家ならではの知見。僕にはまったくなかった視点。実際、リーフレットは手渡しできる紙の媒体として重宝している。

 

2つめの媒体はFacebook。これも開所から間もなく、専用のページを設けることとなった。さて、名称をどうするか?「組織名そのものでなく、概念が表現されていて、魅力的な名称にするのがよい」という北澤さんの助言。またしても専門家の知見。目から鱗がボロボロ落ちまくる。そこで、北澤さんも交えて事務局内で名称の案を出し合って検討した。

それは、ひととおり案が出尽くして議論が停滞しかけた頃だった。あるものが僕の目に入ってきた。それはメモ帳。ラボの環境分野コーディネーターである宇都宮大輔さんの持ち物で、打ち合わせの場でもメモ書きに使われていた。ポケットに入るくらい小型のそれは、一般的に「野帳(やちょう)」と呼ばれるものである。その名のとおり、野外で調査するときに記録するのが主な用途だ。生態学者である宇都宮さんにとっては、長年愛用している七つ道具のひとつだろう。
「これだ!」
突然、ひらめきが僕に起こった。能登のSDGsに関する活動の現場からの速報。Facebookの発信は公開版の野帳だと思えばよい。「能登SDGsフィールドノート」(英語ではNoto SDGs Field Notes)という名称を早速その場で提案。北澤さんからも「なんかいいっすねー」と好評価。数ある名称案のなかから見事、これが採用されることとなった。我ながら魅力的な名称だと感じている。


そのように思い入れのあるページながら、僕自身は実際の発信にほとんどまったく役立っていない。実はSNSが苦手なのである。その点、2018年11月にラボ事務局に着任した宮崎駿(しゅん)さんが機敏な発信をしてくれてきた。多くの人たちが見て、「いいね!」したりフォローしたりしてくださっている。ありがたいことである。即時性と双方向性をもつSNSはとても動的な媒体だと実感している。

 

3つめの媒体がウェブサイトである。SNSと同じくインターネット上にある。しかし、ウェブサイトはどちらかといえば静的な媒体である。基本的な情報が常にどっしりと置かれる場としての意義がある。

 

そして、本稿のような「記事」。細かく分類するなら4つめの媒体ということになる。静的なウェブサイトのなかの動的な要素。そのときどきの活動の結果や振り返り。ラボの公式見解というよりも、むしろ書き手個人の思い。それらを気軽に読んでもらえたら理想だ。動的なSNSと、静的なウェブサイト本体と、そのあいだを埋める記事。Facebook投稿ほどの即時性はないが、ひとまとまりの話題を整理して報告する場所。野帳に書き留めたメモを持ち帰り、簡単なレポートにまとめたようなイメージである。
ということで、「能登SDGsフィールドレポート」(Noto SDGs Field Reports)という名で始めてみることにした。色々な話題を取り上げることになるだろう。果たしてどのくらいの頻度で発行できるだろうか。正直なところ、やってみないとわからないが、まずは挑戦してみたい。

 

北村健二(能登SDGsラボ 社会分野コーディネーター)

 

参考リンク
能登SDGsフィールドノート https://www.facebook.com/noto.sdgs/
株式会社エスプリ http://esprit.am/