珠洲市立大谷小中学校7年生、8年生のみなさんへ
こんにちは。能登SDGsラボの北村です。
2019年の締めくくりとなる素敵な一日。それが12月20日でした。この日、みなさんは「総合的な学習の時間」の成果を発表しました。僕も会場で聞かせていただきました。そして、とても感動しました。7月30日に海洋ごみの講演をしてくださった能登里海教育研究所の木下靖子さんも素晴らしかったとおっしゃっていましたよ!
みなさんに僕の気持ちをお伝えしたくて、この手紙を書くことにしました。ちょっと長くなりますが、よかったら読んでください。
発表会では、まず7年生が発表しました。テーマは「海力(うみりょく)アップ大作戦」。目の前に広がる美しい海。でも、その海には多くのプラスティックごみがあります。7月にご一緒した海岸清掃では、約60㎏ものプラスティックごみが集まりました。これは、その日に集めたごみ全体の重さの68%を占めたとのことでしたね。
集められないような小さい(5mm以下)マイクロプラスティックも大きな問題。小さな魚から大きな魚への食物連鎖。そして、能登から海に出たプラスティックはどこに行くのか? 世界地図でその動きを見てびっくり。太平洋の反対側まで行くとは! また、気候変動で海水の温度が高くなっています。能登で獲れる魚の種類や量も変わってきているようですね。もはやこれは遠い世界のことではありません。
マイクロプラスティックが人間の健康にどう影響するか? 発表会で質問も出ました。いまのところ、まだ分かってないことが多くあります。いますぐにパニックにならなくても大丈夫。今後、研究が進み、新しいことが分かってくるでしょう。人の健康への影響が見つかるかもしれません。大切なのは、正確な情報を手に入れて、冷静に考え行動していくことです。まさにみなさんがしていることです。
発表を締めくくるのは、やっぱり美しい地元大谷の海岸。それが動画にしっかり映し出されていました。それを目に焼き付けて、自分たちがこれからやっていきたい活動の宣言。魅力を伝える、という最後の活動に力がこもっていましたね。
続いて8年生の発表。題名は「大谷の特色を生かした産業の活性化」。これまた大きなテーマですね。
みなさんの取り組みもスケールが大きく夢のあるものでした。株式会社を設立して、揚げ浜式塩田やえびすカボチャなど地元の特産品を調査。生産者にも話を聞きに行きました。そして、カボチャクッキーという商品を開発。えっ、僕たち来場者にクッキーを配ってくれるの? それを、その場で試食できるという企画。カボチャ本来の甘みが生きていておいしい!
みなさんが作る産業の強み。それは、「ないものねだり」でなく「あるもの探し」をしていること。
ところで、演劇を採り入れるアイデアを出したのは誰? 脚本や演出は誰が担当したの? みんなそろって名俳優。すごいね! 場面転換も円滑。しっかり作リ込まれ、事前によく練習されたのですね。見事に実演してくれました。
7年生、8年生の両方に共通していたこと。大きく2つあったと僕は感じています。ひとつめは、「見えないものを見えるようにする」ということ。海のプラスティックごみは、元は我々人間が作り、そして捨てたもの。自分の目の前にあるプラスティック製品は見えます。でも、自分の視界からなくなったあとどうなるのか、見えません。ましてマイクロプラスティックは、目の前にあっても見えにくいですね。このような「見えないもの」を見えるようにしたのがみなさんの研究でした。見えるようにしたことで、自分に何ができるのかを考えることにつながりますね。
大谷の産業活性化も、見えないものを見えるようにした研究です。大谷で作られるえびすカボチャや揚げ浜式塩田の塩。それらにどのような価値があるのか。そして、価値を高めるにはどうすればよいのか。それを、クッキーという具体的な形で見えるようにしました。
両学年に共通していたことのふたつめは、発表のしかたの工夫です。動画に演劇にお菓子の試食にと、みなさんの発想の豊さは無限大。内容に加えて、発表のしかたもお見事でした。両方とも成し遂げるのは難しいことです。
中学生時代にこのような生きた学びを体験できることは貴重です。少なくとも僕が中学生のときには、このような授業はありませんでした。この貴重な体験をみなさんができるのは、先生たち、家族、そして地域の人たちのおかげです。感謝の心を持ち続けたいものですね。そして、地域の宝を大切にしていきたいですね。
これからの人生には色々なことが待ち受けています。もし苦しいことがあったときには思い出しましょう。2019年12月20日。この日、あなたたちが見せた力。本物の力。こんなすごいことをできたのだから大丈夫。自信を持ちましょう。目の前に立ちはだかる壁も、きっと超えられます。
7月9日にSDGsの講演会でお会いしてからみなさんとご縁ができました。そして、みなさんから僕は多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。
みなさんのこれからのご活躍を楽しみにしています!
2020年2月14日
能登SDGsラボ/金沢大学
北村 健二
能登SDGsフィールドレポート:日々の活動のなかで北村個人が感じることを共有するための媒体で、組織の立場や見解を示すものではありません。